顎関節症は「顎が悪い」わけじゃない

実は“ファシア(筋膜)”が原因のケースが多い話

「口を開けるとカクッと鳴る」
「朝起きたら顎が重い」
「歯医者さんで噛みしめを指摘された」

こんな相談を受けることが増えました。
そして最近では、顎関節症=“噛み合わせの問題” という考えだけでは説明できないケースが、ものすごく多くなっています。

結論から言います。
顎の問題は、“顎だけ見ても”解決しません。
原因は、もっと広い場所にあります。


■ 顎関節症の「本当の原因」

── ファシア(筋膜)の滑走性が失われている

よくある誤解は、
「顎関節症=顎の骨や軟骨がずれている」という考え方。

もちろんそれも一部は正しいのですが、
現場で理学療法士として多くのケースを見てきた感覚では、

👉 原因は関節そのものより「まわりの膜(ファシア)」が硬くなること
であることが圧倒的に多いです。

✦ ファシアとは?

わかりやすくいうと、
筋肉や臓器を包んでいる“フィルム” みたいなもの。

このフィルムが硬くなると、
中の組織(筋肉、関節円板)がスムーズに動けなくなり、
開閉のたびに「カクッ」「パキッ」と音が鳴ります。


■ 顎には“舌(ベロ)・首・胸”がつながっている

顎は単独のパーツではありません。
特に重要なのが3つのポイント👇

  • 舌骨(ベロの根元)
  • 胸鎖乳突筋(首の横の筋肉)
  • 胸の前(大胸筋の膜)

これらは全部 ファシアでつながっています。

つまり、
舌の緊張が強い → 顎に影響
首が前に出ている → 顎に影響
猫背 → 顎に影響

という、身体の“力の伝わり方”が問題の本質なんです。

顎が悪いのではなく、
顎に負担が集まる姿勢とファシア環境があるだけ。


■ 「ガコン、バキバキ」と鳴らす矯正はNG

たまに
「顎をガチッと鳴らして調整すれば早いんじゃないですか?」
という質問をいただきます。

正直に言います。
私は、それをやりません。

理由はシンプル。
関節を一瞬“入れた”としても、膜(ファシア)が硬いままだとすぐ戻るから。

根本を変えるなら、
👉 ファシアの“滑り(滑走性)”を回復させる必要があります。


■ 1番大事なのは“顎以外”を見ること

顎関節症の方に
「顎だけを治そうとしないでください」といつもお伝えします。

  • ベロの緊張
  • 首の傾きクセ
  • 肋骨の動き
  • 姿勢のクセ

顎は、「姿勢の最終地点」です。

ここを理解すると、
顎のケア方法が根本から変わります。


■ まとめ:顎関節症は“ファシアの問題”として見る

・音が鳴るのは位置異常ではなく「滑走性の低下」
・顎以外(舌骨、首、胸)のファシアの硬さが原因
・鳴らす矯正より「膜のケア」が先
・姿勢全体を見ることで、顎は自然と整う

顎関節症でお悩みの方は、
「顎をどうにかする」ではなく「体全体を整える」
という視点を持ってみてください。

――それが、最短ルートです。

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